ランスシリーズを何も知らない状態で今から最大限楽しむには

忙しい人向けの概要

  • 記事の対象:ランスシリーズに興味はあるが,どれからプレイしたらいいかわからない人

  • 結論:理想は全作順番にプレイ。時間がないなら03 → 6 → 戦国 → RQ → 9 → 10の順にプレイするのが良い

  • 作品のネタバレ:なし

はじめに

ランスシリーズは,アリスソフトから発売されていた,1989年発売のランス1から始まり2018年のランス10で完結した一連の美少女ゲームシリーズである。私がこのシリーズの存在を初めて知ったのは,多くの例に漏れず,2006年に発売された「戦国ランス」だった。しかし,「戦国ランス」はすでにシリーズの7作目でシナリオも1から地続きになっていたため,当時は手が出せずにいた。他のゲームにかまけている間に続々と作品がリリースされ,とうとう一作もリアルタイムでプレイすることができないままシリーズは完結してしまった。

一作もリアルタイムでプレイ出来なかったことを完結当時は激しく後悔していたが,後に開き直り,全てが揃っている今からプレイするとしたらランスシリーズをどう楽しむべきなのか,また,今だからこそできる楽しみ方もあるのではないかと考えるようになった。実際,「ランスシリーズには興味があるけど作品数が多いからどれから手をつけたらいいのかわからない」と思っている人は多いのではないかと思う。そこで,ちょうどコロナ禍だったこともあり時間もあったので,今から楽しむ場合の一例として,シリーズを全く知らない状態から,全作を一気にプレイしたら実際にどのように感じられるか試してみることにした。本記事はその体験を踏まえ,これからランスシリーズを最大限に楽しむにはどうしたらよいか,その指針をまとめたものである。

環境

  • 期間:2021年8月〜2022年2月(約半年)

  • 使用機体:Surface Pro 5 (Windows 10 64bit)

プレイした作品(プレイした順)

  1. ランス〜光をもとめて〜(1)

  2. ランスII〜反逆の少女たち〜(2)

  3. ランスIII〜リーザス陥落〜(3)

  4. ランスIV〜教団の遺産〜(4)

  5. ランス4.1〜お薬工場を救え!〜,ランス4.2〜エンジェル組〜(4.1,4.2)

  6. 鬼畜王ランス(鬼畜王)

  7. ランス5D〜ひとりぼっちの女の子〜(5D)

  8. ランスVI〜ゼス崩壊〜(6)

  9. 戦国ランス(戦国)

  10. ランス・クエスト,ランスクエスト マグナム(RQ)

  11. ランス01〜光をもとめて〜(01)

  12. ランス03〜リーザス陥落〜(03)

  13. ランスIX〜ヘルマン革命〜(9)

  14. ランスX〜決戦〜(10)

「ランス02〜反逆の少女たち〜」は入手困難なため未プレイ ランス02は2023年4月13日にTADAさんのブログで無料公開されました。これでランスシリーズは全作現在でもプレイできるようになりました

互換性について

まずPCゲームをプレイする際に無視できないのが動作環境やOS互換性の問題だが,ランスシリーズに関しては全くの杞憂だった。ランスシリーズは全体的にゲームプログラムのOS依存性がとても低く(ここも地味にすごい点だと思う),2022年時点で標準的なWindows 10 64bit搭載機で全作品全く問題なくプレイできた。ランス1〜ランス4.2は当時の雰囲気を味わいたかったのでWin版ではなくPC-98版をNeko Project IIというPC98エミュレータを使用してプレイした(全作問題なくエンディングまでプレイできた)。鬼畜王ランスは配布されているCDイメージからインストールしてパッチを当てたり音源を変換するなどをしてディスクレス化。ランス5D以降はそのままプレイ可能だった。まとめると以下のようになる。

  • ランス1〜4.2:無料配布されているPC-98版。アリスソフトアーカイブスからFDDイメージファイルをダウンロードし,Neko Project IIで読み込みプレイした。ランス1,2はBASICで書かれておりFDDイメージを直接読み込んでプレイする方式で,ランス3以降はMS-DOS6.2システムのHDDにインストールしてプレイした。具体的な手順に関しては別記事でまとめる予定

  • 鬼畜王ランス:1〜4.2同様に無料配布されている。アリスソフトアーカイブスからCDイメージファイルをダウンロードし、BGM音源をMP3に変換して_inmm.iniでディスクレス化。詳しいやり方はここが詳しい

  • ランス5D〜10:現行Windows機でそのまま動作する

実際のプレイ方針

あくまでもランスシリーズの世界観を可能な限り理解した状態でランス10を最大限に楽しむことを最終目標としていたので,基本的には1作品を自分が遊びきってその作品の設定や正史を完全に理解できたと思える程度までやり込んでから次の作品に移ることにした。鬼畜王以降はやり込み要素がかなり多いので,その辺りはプレイ満足度とうまく折り合いをつけて,極端にプレイ時間が嵩まない範囲で切り上げることにした。例えばランス6は挑戦モードのクエスト全消化,グナガンなどの挑戦ボス全討伐,戦国ランスは全ルートクリア,全迷宮踏破,上杉・毛利・独眼流・武田系ボーナス全解放,ランスクエストはW1クエスト全消化(W2,W3は割愛),ランス9は真エピローグ解放,自由戦闘全消化といった具合。一方でランス10はやることがなくなるまでプレイし続ける予定(シナリオは全てクリアしたけど今もプレイ中)。

どの作品をどの順でプレイすべきか

10を開始する前に把握しておきたい設定とそれに関連する作品

ランスシリーズは設定がとても作り込まれており,多くの設定を知っているほど完結作であるランス10を楽しめるようになるのは言うまでもないのだが,世界観が壮大なため全てを把握するのはなかなか大変であると思う。個人的には,ランス10をプレイする前に以下の設定は把握しておきたい(重要度順)。

  • リーザス,ヘルマン,ゼス,自由都市,JAPAN,AL教といった勢力のざっくりとした歴史的背景と重要人物

    • 01(リーザス),03(リーザス,ヘルマン,自由都市), 6(ゼス),戦国(JAPAN),RQ(自由都市,AL教),9(ヘルマン),鬼畜王(全勢力)

  • 魔王・魔人のシステム,人類と魔軍の衝突の歴史,魔物界の勢力争い

    • 03,4,6,戦国,9,鬼畜王

  • 物語の舞台となるルドラサウム大陸の仕組み,神,天使,悪魔の役割

    • 鬼畜王,RQ

実際にプレイしてみて,ゲームとしての面白さ,世界観や設定を把握するための重要度,概算プレイ時間の3つの観点から,各作品を独断と偏見に満ちたコメントとともにまとめてみた。

作品 面白さ 重要度 プレイ時間 コメント
1 5h 01プレイするならスキップでもOK。当時の雰囲気を味わいたいならプレイしてもいい
2 ★★ ★★ 8h カスタム四魔女初登場。2か02どちらかはできればやっておきたいがスキップしても特に問題はない。02と大きな違いはない模様
3 ★★★ ★★ 10h リーザスとヘルマンの関係や魔王,魔人,神,悪魔などに初めて言及される,世界観の大枠を決定づける重要な作品だが03をプレイするならスキップしても問題ない。3か03のどちらかは9プレイの前にはやっておきたい
4 ★★★ ★★★ 15h 旧作で唯一リメイクされていない。ヘルマンや聖魔教団などランス9と深く関わりのある要素が多いので,ランス9をプレイする前にできればやっておきたいが,ランス10でそこそこフォローがあるため必須ではない。個人的にはBGMと世界観がとても好き
4.1, 4.2 ★★ ★★ 5h 後続作品に出てくる新キャラは数人登場するが,世界観に関わる重要な要素はほとんどないのでスキップしても問題ない。ランスの鬼畜度合いとギャグ要素がとても強い
鬼畜王 ★★★★★ ★★★★ >100h 超名作。シリーズが完結した今の感覚で言うと,シリーズ全作品を1〜10まで一気に駆け抜ける感じ。ほぼ全要素が詰め込まれていると言っても過言ではなく,後続の作品は鬼畜王設定に基づいているものがとても多い。が,重要な要素の大半は後続作品でフォローされるのと,一部設定が正史と異なるものもあるので,どうしても時間がない場合は(非推奨だが)スキップもあり。正史と異なるifの世界だが,5D以降に入る前にぜひプレイして,少なくともルドラサウムに会うエンディングまではやっておきたい。ゲームとしても文句なしで面白く,プレイしていて気づくと大体朝になっている。時間泥棒ゲーその1
5D ★★★ ★★ 6h ゲームシステムはほぼ全てが運頼みで斬新で面白い。リズナやコパンドンなど今後の作品に大きく関わる重要人物が数人登場するものの,ストーリー自体はあまり背景設定とは関係なく,6や戦国の理解が少し深まる程度なので,4.1,4.2同様スキップしても問題ない
6 ★★★★ ★★★★ 50h ゼス王国とその周りの設定や運命の女など重要な設定が登場する。9で重要な役割を果たすパットンがランスと正史で初邂逅するのと,ゼスの話はこれ以降10まであまり出てこないのでプレイ推奨
戦国 ★★★★★ ★★★★ >100h 魔王一行(美樹,健太郎,日光)と初の本格邂逅。正史での結末が非常に重要だが,ボリューム・自由度が大きすぎる上,凶悪な中毒性ゆえ無限に時間が吸われる。短時間で済ませたいなら正史ルートだけやっておけば問題ないがそれだけではもったいない。時間泥棒ゲーその2
RQ ★★★★ ★★★★ 50h カラーやAL教がメインで重要人物多数登場。マグナムでは無印からシステムが大きく改善されており,シナリオも正史につながるのはマグナムの方なのでマグナムでエンディングまでプレイ推奨。やり込み具合でプレイ時間が大きく変わる。リセットが可愛い(重要)
01 ★★★ ★★★ 10h 1のリメイク。20年以上も前の作品のリメイクにも関わらず,ダンジョンのシステムを除き1の再現度が意外と高く,こちらをプレイしていれば問題ない。こちらが正史扱い
03 ★★★★ ★★★★ 30h 3のリメイク。01,02と違い結構相違点が多いがこちらが正史。今であれば9の前にはプレイしたい(発売日はこちらの方が後だが9のネタバレはないのでご安心を)
9 ★★★★ ★★★★ 30h これまで何度も関わってきたヘルマンが満を持してメイン舞台に。ゲームシステムはタクティカルRPG。人間ドラマがただただアツく,食い入るようにストーリーを読んだ。真エンディングまでプレイしたい
10 ★★★★★ ★★★★★ >100h これまでのランスシリーズを締めくくるのに相応しい最後にして最高傑作。クライマックスは気づくと視界がぼやけてまともに見られない。10をオールクリアしたとき,シリーズを1からプレイして本当に良かったと思った。ゲームシステムもソシャゲ的な要素,クエストを中心としたランスシリーズの伝統的なシステム,戦国ランス譲りの周回要素が高いレベルで融合しており,何周でもできてしまう。時間泥棒ゲーその3

面白さ:ゲームとして見たときの面白さ
重要度:世界観や設定を把握するための重要度

以上を踏まえると、最終目的であるランス10を除き

  • ボリューム:鬼畜王,戦国 >> 6,RQ > 03,9 >> その他

  • 重要度:鬼畜王,6,戦国,RQ,03,9 > 4,01 > その他

になるのではないかと思う。鬼畜王は設定上とても重要な作品ではあるが,その内容の大部分は後続作品でカバーされること,後続作品で一部設定が変更されていること,遊び尽くすのに膨大なプレイ時間がかかることなどを考慮すると,(非推奨ではあるが)スキップも一手。したがって,プレイ時間を抑えつつ,世界観を最低限把握したい場合は正史時系列順で

03  → 6 → 戦国 → RQ → 9 → 10

より網羅したい場合はそれに鬼畜王,01,4(優先度順)を追加して

01 → 03 → 4 → 鬼畜王 → 6 → 戦国 → RQ → 9 → 10

過不足なく全要素を把握したい場合はさらに2(or 02),5D,4.1,4.2(優先度順)を追加して

01 → 2(or 02) → 03 → 4 → 4.1,4.2 → 鬼畜王 → 5D → 6 → 戦国 → RQ → 9 → 10

とにかく全作品プレイしたい場合は,(ほぼ)発売順に

1 → 2 → 3 → 4 → 4.1,4.2 → 鬼畜王 → 5D → 6 → 戦国 → RQ → 01 → 02 → 03 → 9 → 10

の順でプレイすれば良いのではないかと思う。リメイク版(01,02,03)をどの段階でプレイするかは好みで分かれると思うが,今プレイするのであれば個人的には9より前に03をプレイした方がいいと思う。もちろん,純粋な発売日順でも全く問題ないが,その場合は3の内容を9をプレイする前におさらいしておきたい。

終わりに

以上,ランスシリーズを全く知らない状態から約30年分の内容を半年で駆け抜けた体験を基に,今からランスシリーズをプレイするとしたらどのようにすれば良いかを考察してみた。 ランスシリーズは美少女ゲームはおろかRPG全体を見ても非常に珍しい(知る限り他に例を見ない),共通した世界観と登場人物群で継続したストーリーを30年以上もの間展開したゲームシリーズである。 昨今のコンテンツが多様化し変化も激しい現在の状況を鑑みると,このような作品は,非常に残念ではあるが,おそらく今後も現れないと思われる。 30年分の作品をプレイするのにはそれ相応に時間はかかる上,ランスシリーズはゲームとしても難易度が高く,時にはプレイそのものが苦痛に感じる時もあるかもしれない。しかし,それらを乗り越え全ての作品を攻略し,ランス10で物語の終着点にたどり着いたとき,他のゲームでは到底味わえない唯一無二の達成感と感動を得ることができるだろう。

本記事がランスシリーズに興味を持つきっかけになったり,ランスシリーズに興味はあるが踏み出せずにいる人の背中を1人でも押すものになっていれば,これに勝る喜びはない。ぜひ,無理をせず楽しみながらその達成感と感動を味わってほしい。